ゆがみーる

治療家にとって初めての姿勢分析|セラピスト・柔道整復師・トレーナ向けに姿勢分析に必須のポイント

これから姿勢分析・評価を始めるためのポイント

これから姿勢分析・評価を始める、セラピスト・柔道整復師・トレーナ向けに、姿勢分析について以下のポイントをおさえましょう。

  1. 姿勢の評価方法の代表的なアプローチは?
  2. 姿勢評価の目的は?
  3. 理想的な姿勢とは?
  4. 姿勢測定技術とは?またそのメリットは何でしょうか?
  5. アライメント評価とは何でしょうか?

最後に、これから姿勢分析・評価を始める治療家が診るべきポイントとして、特に「骨盤帯」「体幹」「下肢」についてのランドマーク(解剖学的特徴)の触診や機能評価について、ポイントをおさえます。

姿勢分析・評価の代表的なアプローチ

姿勢の評価方法にはいくつかの代表的なアプローチがあります。

  • 目視評価: 治療家が患者の姿勢を直接目で主観的に観察し、ゆがみやバランスの問題を評価します。これには正面観察や横観察、背面観察などの視点が含まれます。
  • 静的評価: 患者が静止している状態で姿勢を評価します。通常は立位や座位で行われ、骨盤の傾きや背骨のカーブ、肩や頭の位置などを評価します。
  • 動的評価: 患者の運動を評価します。歩行や立ち上がりなどの動作を観察し、歩行パターンやバランスの問題、動作中の姿勢の変化を評価します。
  • 測定器による評価: 計測機器を使用して骨盤の傾きや運動、関節の可動域などを測定し、客観的な数値データを得て評価します。例えば、ゴニオメーターや筋電計、3次元動作分析装置、近年はAIによる姿勢測定・運動測定などが利用されます。

運動の客観的な評価には、動作分析のアプリが利用されます。

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姿勢分析・評価の目的

姿勢分析・評価は治療家が患者の状態を客観的に評価し、適切な治療計画を立案するため、以下の目的で実施されます。

  • 異常姿勢やバランスの問題を評価、改善
  • 痛みや不快感の原因となる姿勢や運動の異常をスクリーニング
  • 患者の病態や進行性の疾患を早期に発見
  • 患者の進捗を評価し、治療効果をモニタリングして治療計画を更新
  • 患者に治療計画や進捗をカウンセリングし、信頼関係を構築することで最大限の治療効果を追求

理想の姿勢とは?

理想的な姿勢は、個人の筋骨格系の構造と機能に最も適した姿勢のことを指します。一般的には、以下の特徴を持つ姿勢が理想的とされています。

  • 頭は身体の中心に位置し、正面を向いている。
  • 肩は水平でバランスが取れており、前後に傾いていない。
  • 胸郭は開いており、正しい呼吸が行える。
  • 脊柱は生理的弯曲(頚椎前弯、胸椎後弯、腰椎前弯)
  • 骨盤は水平で安定しており、均等な負荷がかかっている。
  • 下肢の関節は正しい位置にあり、バランスのとれた姿勢を保っている。

なお、人体は左右均等ではないため、理想的な姿勢は左右対称ではないことに注意して評価します。

姿勢測定技術とは?

姿勢測定技術は、画像処理やセンサーテクノロジーを活用して、姿勢や動作を推定・解析する技術です。以下のメリットがあり、治療家にとって必須のツールとなり、患者の姿勢評価や治療計画の立案、指導に活用されています。

  • 非侵襲的: 患者に装着するセンサやカメラなどを使用するため、患者に負担をかけることなく姿勢や運動の評価・分析が可能です。
  • 客観的評価: センサーやカメラより推定されるデータに基づいて評価するため、主観的なバイアスが少なく、客観的な結果が得られます。
  • リアルタイムモニタリング: リアルタイムで解析することで、患者の姿勢や動作の変化を迅速に分析し、リアルタイムでフィードバックや指導を行うことができます。
  • 大量データの処理: クラウド等の技術により大量のデータを高速かつ効率的に処理できるため、膨大な情報から傾向やパターンを抽出するAI技術により精密な分析が可能です。

アライメント評価とは?

アライメント評価は、骨盤帯、足部、上半身などの姿勢の評価方法の一つです。アライメントとは、身体の部位が正しい構造や運動、位置関係のことで、各部位のアライメントのバランスを評価することで、姿勢や運動機能の問題を把握し、適切な治療計画を立案するために用いられます。
例えば「骨盤」「足部」「上半身」のアライメント評価の例は、以下のようになります。

  • 骨盤:骨盤の水平な位置や前傾・後傾、左右の傾斜を評価します。骨盤の歪みは姿勢やバランスに大きな影響を与えます。
  • 足部:足部のアーチや構造、足関節の運動などを評価します。足部のアライメントが不適切な場合、全身の姿勢やバランスに悪影響を及ぼすことがあります。
  • 上半身:頭部の位置、肩の位置や脊柱のカーブを評価します。肩が前に突き出していたり、背中のカーブが異常になって上半身のアライメントが崩れると、首や肩の痛み、姿勢の不安定さなどが引き起こされる可能性があります。

また最後に、姿勢分析における骨盤帯、体幹、下肢の一般的な評価と触診、機能解剖上のポイントをまとめます。なお機能解剖学的触診の評価は、学校や資格のある専門家から適切な訓練と指導を受けることが重要であることに注意してください。

姿勢分析における骨盤帯の評価

骨盤帯は、骨、関節、筋肉、靭帯、その他の軟部組織からなる複雑な構造をしており、ここでは、姿勢分析における骨盤帯の一般的な評価方法を紹介します。

  • 骨のランドマーク(解剖学的特徴): 基準点を設定し、構造を特定するために、骨性のランドマークを触診することから始めることが多い。骨盤帯の骨性ランドマークの例としては、腸骨稜、恥骨結合、坐骨結節、仙骨などがあります。
  • 関節の可動性評価: 仙腸関節(SI関節)や恥骨結合などの骨盤の関節は、可動性と圧痛を評価することができます。セラピストは、これらの関節の位置や動きを評価するために、スプリングテストや圧縮テストなどの特定のテクニックを使用することがあります。
  • 軟部組織の触診: 骨盤周辺の筋肉やその他の軟部組織について、深い圧力、表面的、機能的、横断摩擦などの触診により、圧痛、緊張、トリガーポイントなどこれらの組織の状態を評価することができます。

機能解剖では、骨盤帯は、体幹と下肢の間で安定性と体重支持を提供し、動きを円滑にします。腸骨稜、恥骨結合、座骨結節などの骨のランドマークは、骨盤の構造と位置関係を特定するのに役立ちます。仙腸関節と恥骨結合は体重を支える重要な関節であり、その可動性と安定性は骨盤の機能にとって重要です。また筋肉、靭帯、筋膜などの軟部組織が骨盤の構造を支えています。触診により、その状態を評価し、異常や機能不全を特定するのに役立ちます。

姿勢分析における体幹の評価

体幹には、胸椎、腰椎、肋骨、および関連する軟部組織が含まれます。ここでは、姿勢分析における体幹の一般的な評価方法を紹介します。

  • 骨のランドマーク(解剖学的特徴): 脊椎の棘突起を触診することで、脊椎のアライメントと可動性を評価することができます。親指や他の指を使って、個々の棘突起の位置を確認し、圧痛、偏位、異常な可動性を評価することができます。
  • 肋骨の触診 肋骨は胸椎と胸骨に付着し、胸郭を形成しています。肋骨を触診することで、肋骨の位置、可動性、圧痛を評価することができます。セラピストは、肋骨とその周囲の軟部組織を評価するために、穏やかな圧力と動きを使用することがあります。
  • 軟部組織の評価: 体幹の筋肉、筋膜、その他の軟部組織を触診し、緊張、圧痛、トリガーポイントなどを評価することができます。これらの組織の評価には、深圧、ストレッチ、筋膜リリースなどを使用します。

機能解剖では、体幹は、重要な臓器を収容し保護し、構造的なサポートを提供し、動きを円滑にします。椎骨の棘突起により、脊椎のアライメントと可動性を評価することができ、これは姿勢、動作、および脊椎全体の健康にとって重要です。肋骨は、呼吸時の胸の膨らみに寄与し、心臓や肺などの重要な器官を保護します。肋骨を触診することで、呼吸に影響を与えたり、痛みを引き起こす可能性のある異常や機能不全を特定することができます。筋肉や筋膜などの軟部組織は、体幹の安定性、動き、姿勢に重要な役割を果たします。これらの組織を触診することで、組織の状態や緊張、痛みや機能障害の原因となりうるトリガーポイントに関する情報を得ることができます。

姿勢分析における下肢の評価

下肢には、臀部、股関節、大腿部、膝関節、下腿、足関節、足部などの関節や部位があります。ここでは、姿勢分析における下肢の一般的な評価方法を紹介します。

  • 骨のランドマーク(解剖学的特徴): 骨盤と同様に、下肢の骨のランドマークを触診することから始めることが多い。例えば、大腿骨大転子、膝蓋骨、脛骨結節、母趾球、中足骨頭などです。
  • 関節の評価: 股関節、膝関節、足関節などの関節の構造と可動性、アライメントを評価することができます。関節の評価には、可動域検査、関節の遊びの評価など、さまざまな手法があります。
  • 軟部組織の触診: 下肢の筋肉、腱、靭帯、その他の軟部組織を筋収縮、腱のグライディング、軟部組織の機能的、横断摩擦などにより触診し、これらの構造や運動、緊張、圧痛、トリガーポイントを評価することができます。

機能解剖では、下肢は、運動、体重負荷、および全体的な動きにおいて重要な役割を担っています。大転子、膝蓋骨、踝などの骨のランドマークは、股関節、膝関節、足関節などの関節と筋肉の機能を評価するための基準点となります。触診の技術は、これらの関節のアライメント、可動性を評価するのに役立ちます。筋肉、腱、靭帯などの、下肢の支持、安定性、運動制御を行う軟部組織を触診することで、下肢の緊張、圧痛、トリガーポイントなどを特定することができます。


参考文献

  • Gray’s Anatomy, 39th Edition: The Anatomical Basis of Clinical Practice. , Churchill Livingstone
  • カパンディ関節の生理学 Ⅰ上肢, Ⅱ 下肢, Ⅲ 脊椎・体幹・頭部
  • 解体演書「下肢の機能と構造」「上肢の機能と構造」, 監修 桜木晃彦・医学博士, 発行 株式会社ジースポート(gsport, inc.)

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